部分分数分解のリアルな計算のやり方。「正攻法で裏ワザを超えろ!!」

代数

中学受験の算数から始まり、数列の和(数学B)や積分(数学III)の計算に至るまでつきまとう「部分分数分解」ですが、みなさんはどのように計算しますか?

  • 恒等式の係数比較を行いますか?
  • 具体的な数値を代入しますか?
  • 裏ワザとも呼ばれる ”ヘビサイドの展開定理” を適用しますか?

いずれも一般的な計算方法があると思いますが、「本筋の計算から一時的に外れなければならない」など、大きくはないながらも多少の手間がかかりますよね。

今回は、万能な方法とは言えなくても “”メインの計算から逸れることなく上手く処理できる場合が思ったよりもある!” ということを感じていただければと思います。
(二乗を含む場合や、3つの分数に分解する場合についても言及されています。三乗についても多くのヒントが得られると思います。大学以降の数学の逆ラプラス変換でも用いるものでしょう。理解すれば簡単だと思います。)

なぜ、そのような手順を踏めば計算できるのかを自分の頭で理解することが大切です!

本記事は、以下のYouTube動画に基づいております。

理論に関してはこちらの記事

部分分数分解の全ての「なぜ?」に可換環論で答える。

をご覧ください!!

 

数列の和 \(\sum\) において

例題1.1:1/k(k+1)

$$\sum_{k=1}^n \frac{1}{k(k+1)}=\frac{1}{\fbox{?}}\sum_{k=1}^n \left(\frac{\fbox{?}}{k}-\frac{\fbox{?}}{k+1}\right)$$

右辺を通分したときに “とにかく分子から \(k\) を消去したい” と思うわけです。その \(k\) さえ消去できれば残るは定数のみですから、それを適当な数で割れば分子は \(1\) となるのです。

さて、\(k\) を消去するためには、部分分数分解したあとの分子の比は分母の \(k\) の係数の比となる必要があります。今回は \(1:1\) ですから

$$\sum_{k=1}^n \frac{1}{k(k+1)}=\frac{1}{\fbox{?}}\sum_{k=1}^n \left(\frac{1}{k}-\frac{1}{k+1}\right)$$

この時点で通分したときの \(k\) の項は気にしなくて良いことになります。右辺の分子の定数項のみ計算すると \(1-0=1\) ですから

$$\sum_{k=1}^n \frac{1}{k(k+1)}=\frac{1}{1}\sum_{k=1}^n \left(\frac{1}{k}-\frac{1}{k+1}\right)$$

すなわち

$$\sum_{k=1}^n \frac{1}{k(k+1)}=\sum_{k=1}^n \left(\frac{1}{k}-\frac{1}{k+1}\right)$$

となります。

例題1.2:1/(2k-1)(2k+3)

$$\sum_{k=1}^n \frac{1}{(2k-1)(2k+3)}=\frac{1}{\fbox{?}}\sum_{k=1}^n \left(\frac{\fbox{?}}{2k-1}-\frac{\fbox{?}}{2k+3}\right)$$

同様に、右辺を通分したときに “とにかく分子から \(k\) を消去したい” と思うわけですが、分母の \(k\) の係数の比は \(1:1\) ですから

$$\sum_{k=1}^n \frac{1}{(2k-1)(2k+3)}=\frac{1}{\fbox{?}}\sum_{k=1}^n \left(\frac{1}{2k-1}-\frac{1}{2k+3}\right)$$

この時点で通分したときの \(k\) の項は気にしなくて良く、右辺の分子の定数項のみ計算すると \(3-(-1)=4\) ですから

$$\sum_{k=1}^n \frac{1}{(2k-1)(2k+3)}=\frac{1}{4}\sum_{k=1}^n \left(\frac{1}{2k-1}-\frac{1}{2k+3}\right)$$

となります。

 

分母が \((ax+b)(cx+d)\) のタイプの積分

例題2.1:1/(5x-2)(3x+4)

$$\int \frac{1}{(5x-2)(3x+4)} dx=\frac{1}{\fbox{?}}\int \left(\frac{\fbox{?}}{5x-2}-\frac{\fbox{?}}{3x+4}\right)dx$$

数列の和のときと同様に、右辺を通分したときに “とにかく分子から \(x\) を消去したい” と思うのですが、分母の \(x\) の係数の比は \(5:3\) ですから

$$\int \frac{1}{(5x-2)(3x+4)} dx=\frac{1}{\fbox{?}}\int \left(\frac{5}{5x-2}-\frac{3}{3x+4}\right)dx$$

この時点で通分したときの \(x\) の項は気にする必要がなく、右辺の分子の定数項のみ計算すると \(5 \times 4-3 \times (-2)=26\) ですから

$$\int \frac{1}{(5x-2)(3x+4)} dx=\frac{1}{26}\int \left(\frac{5}{5x-2}-\frac{3}{3x+4}\right)dx$$

となります。

例題2.2:x/(5x-2)(3x+4)

$$\int \frac{x}{(5x-2)(3x+4)} dx=\frac{1}{\fbox{?}}\int \left(\frac{\fbox{?}}{5x-2}-\frac{\fbox{?}}{3x+4}\right)dx$$

今回は、右辺を通分したときに “とにかく分子から定数項を消去したい” と思いますので、分母の定数項は \(-2\) と \(4\) であって、その比は \(1:(-2)\) ですから

$$\int \frac{x}{(5x-2)(3x+4)} dx=\frac{1}{\fbox{?}}\int \left(\frac{1}{5x-2}+\frac{2}{3x+4}\right)dx$$

これは、左辺の分子が \(x\) であるわけですが、右辺に \(x=0\) を代入したときに被積分関数 \(=0\) となるような比で分子を設定したことになります。

この時点で通分したときの定数項は気にする必要がなく、右辺の分子の \(x\) の係数のみ計算すると \(1 \times 3+2 \times 5=13\) ですから

$$\int \frac{x}{(5x-2)(3x+4)} dx=\frac{1}{13}\int \left(\frac{1}{5x-2}+\frac{2}{3x+4}\right)dx$$

となります。

例題2.3:(x+1)/(5x-2)(3x+4)

$$\int \frac{x+1}{(5x-2)(3x+4)} dx=\frac{1}{\fbox{?}}\int \left(\frac{\fbox{?}}{5x-2}-\frac{\fbox{?}}{3x+4}\right)dx$$

今回は、右辺を通分したときに “とりあえず分子が \(x+1\) の定数倍になるようにしたい” と思いますので、右辺に \(x=-1\) を代入したときに被積分関数 \(=0\) となれば良く、各々の分母は \(-7\) と \(1\) でその比は \(7:(-1)\) ですから

$$\int \frac{x+1}{(5x-2)(3x+4)} dx=\frac{1}{\fbox{?}}\int \left(\frac{7}{5x-2}+\frac{1}{3x+4}\right)dx$$

この時点で通分したときの \(x\) の係数と定数項の比は気にする必要がなく、\(1\) にしたい分子の \(x\) の係数のみ計算すると \(7 \times 3+1 \times 5=26\) ですから

$$\int \frac{x+1}{(5x-2)(3x+4)} dx=\frac{1}{26}\int \left(\frac{7}{5x-2}+\frac{1}{3x+4}\right)dx$$

となります。

例題2.4:(x-2)/(5x-2)(3x+4)

$$\int \frac{x-2}{(5x-2)(3x+4)} dx=\frac{1}{\fbox{?}}\int \left(\frac{\fbox{?}}{5x-2}-\frac{\fbox{?}}{3x+4}\right)dx$$

例題2.3と同様に、右辺を通分したときに “とりあえず分子が \(x-2\) の定数倍になるようにしたい” と思いますので、右辺に \(x=2\) を代入したときに被積分関数 \(=0\) となれば良く、各々の分母は \(8\) と \(10\) でその比は \(4:5\) ですから

$$\int \frac{x-2}{(5x-2)(3x+4)} dx=\frac{1}{\fbox{?}}\int \left(\frac{4}{5x-2}-\frac{5}{3x+4}\right)dx$$

この時点で通分したときの \(x\) の係数と定数項の比は気にする必要がなく、\(1\) にしたい分子の \(x\) の係数のみ計算すると \(4 \times 3-5 \times 5=-13\) ですから

$$\int \frac{x-2}{(5x-2)(3x+4)} dx=-\frac{1}{13}\int \left(\frac{4}{5x-2}-\frac{5}{3x+4}\right)dx$$

となります。

 

分母が \((x-\alpha)^2(x-\beta)\) のタイプの積分

例題3.1:1/(x-1)^2(x+2)

今までと同様に、右辺を通分したときに “とにかく分子から定数項以外を消去したい” と思うのですが、分母の最高次の係数の比は \(1:1\) ですから、はじめから

$$\int \frac{1}{(x-1)^2(x+2)} dx=\frac{1}{\fbox{?}}\int \left\{\frac{x+\fbox{?}}{(x-1)^2}-\frac{1}{x+2}\right\}dx$$

と設定できます。この時点で通分したときの \(x^2\) の項は消え去ります。次に、\(x\) の項を消去したいので、\((x+2)(x+\fbox{?})\) の \(x\) の係数が \((x-1)^2\) の \(x\) の係数 \(-2\) に等しければ良く

$$\int \frac{1}{(x-1)^2(x+2)} dx=\frac{1}{\fbox{?}}\int \left\{\frac{x-4}{(x-1)^2}-\frac{1}{x+2}\right\}dx$$

このとき、分子の定数項のみ計算すると \((-4) \times 2-1 \times 1=-9\) ですから

$$\int \frac{1}{(x-1)^2(x+2)} dx=-\frac{1}{9}\int \left\{\frac{x-4}{(x-1)^2}-\frac{1}{x+2}\right\}dx$$

となります。

 

ちなみに、積分を実際に計算するためには \(x-4=(x-1)-3\) より

$$\frac{x-4}{(x-1)^2}=\frac{1}{x-1}-\frac{3}{(x-1)^2}$$

として処理をします。

例題3.2:x/(x-1)^2(x+2)

右辺を通分したときに “とにかく分子から \(x\) の項以外を消去したい” と思います。

ここで「分母の最高次の係数の比は \(1:1\) ですから…」と例題3.1と同様に進めても良いのですが、\((x-1)^2\) の \(x^2\) の係数と定数項は等しく \(1\) であることに着目しても良いでしょう。

このとき、\((x+2)\times\fbox{1次式}\) の \(x^2\) の係数と定数項が等しくなれば良いので

$$\int \frac{x}{(x-1)^2(x+2)} dx=\frac{1}{\fbox{?}}\int \left\{\frac{2x+1}{(x-1)^2}-\frac{\fbox{?}}{x+2}\right\}dx$$

と設定でき、\((x+2)(2x+1)\) の \(x^2\) の係数と定数項は等しく \(2\) なので

$$\int \frac{x}{(x-1)^2(x+2)} dx=\frac{1}{\fbox{?}}\int \left\{\frac{2x+1}{(x-1)^2}-\frac{2}{x+2}\right\}dx$$

この時点で通分したときの \(x^2\) の項と定数項は消え去り、分子の \(x\) の係数のみ計算すると \((2 \times 2+1 \times 1)-2 \times (-2)=9\) ですから

$$\int \frac{x}{(x-1)^2(x+2)} dx=\frac{1}{9}\int \left\{\frac{2x+1}{(x-1)^2}-\frac{2}{x+2}\right\}dx$$

となります。

 

ちなみに、積分を実際に計算するためには \(2x+1=2(x-1)+3\) より

$$\frac{2x+1}{(x-1)^2}=\frac{2}{x-1}+\frac{3}{(x-1)^2}$$

として処理をします。

 

分母が \(x^3+a^3\) のタイプの積分

念のために確認しておくと

$$x^3+1=(x+1)(x^2-x+1)$$

と因数分解されます。

例題4.1:1/(x^3+1)

しつこいですが、右辺を通分したときに “とにかく分子から定数項以外を消去したい” と思います。例題3.1と同様に、分母の最高次の係数の比は \(1:1\) ですから、はじめから

$$\int \frac{1}{x^3+1} dx=\frac{1}{\fbox{?}}\int \left(\frac{1}{x+1}-\frac{x+\fbox{?}}{x^2-x+1}\right)dx$$

と設定できます。この時点で通分したときの \(x^2\) の項は消え去ります。次に、\(x\) の項を消去したいので、\((x+1)(x+\fbox{?})\) の \(x\) の係数が \(x^2-x+1\) の \(x\) の係数 \(-1\) に等しければ良く

$$\int \frac{1}{x^3+1} dx=\frac{1}{\fbox{?}}\int \left(\frac{1}{x+1}-\frac{x-2}{x^2-x+1}\right)dx$$

このとき、分子の定数項のみ計算すると \(1 \times 1-(-2) \times 1=3\) ですから

$$\int \frac{1}{x^3+1} dx=\frac{1}{3}\int \left(\frac{1}{x+1}-\frac{x-2}{x^2-x+1}\right)dx$$

となります。

 

ちなみに、積分を実際に計算するためには \((x^2-x+1)^\prime=2x-1\) より

$$\frac{x-2}{x^2-x+1}=\frac{1}{2}\left(\frac{2x-1}{x^2-x+1}-\frac{3}{x^2-x+1}\right)$$

として処理をします。

例題4.2:x/(x^3+1)

例題3.2のように、右辺を通分したときに “とにかく分子から \(x\) の項以外を消去したい” と思います。

ここで、\(x^2-x+1\) と比較すると \((x+1)\times\fbox{1次式}\) の \(x^2\) の係数と定数項が等しくなれば良いので

$$\int \frac{x}{x^3+1} dx=\frac{1}{\fbox{?}}\int \left(\frac{1}{x+1}-\frac{x+1}{x^2-x+1}\right)dx$$

この時点で通分したときの \(x^2\) の項と定数項は消え去ります。このとき、分子の \(x\) の係数のみ計算すると \(1 \times (-1)-(1+1)=-3\) ですから

$$\int \frac{x}{x^3+1} dx=-\frac{1}{3}\int \left(\frac{1}{x+1}-\frac{x+1}{x^2-x+1}\right)dx$$

となります。

 

ちなみに、積分を実際に計算するためには \((x^2-x+1)^\prime=2x-1\) より

$$\frac{x+1}{x^2-x+1}=\frac{1}{2}\left(\frac{2x-1}{x^2-x+1}+\frac{3}{x^2-x+1}\right)$$

として処理をします。

 

最後に

いかがでしたか?

以上の内容は、私が何度も何度も恒等式の係数比較などを繰り返すうちに蓄積された “これって考えればわかるよね?” という経験によるものになります。

自分で泥臭く経験を積んで何かしらの着眼点を得れるのはとても良いことだと思いますし、他人が得た経験によるアイデアをもらって成長することも、また大切なことだと思います。





AkiyaMath

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