3次方程式の解の公式(第2弾) 〜三角関数で解を記述してみよう!〜

代数

3次方程式の解の公式とは、方程式の係数に対して、有限回の四則演算と累乗根をとる操作の組み合わせによって、解を記述する公式のことでした。今回は、その制限を外して新しい解の公式を導く試みをしたいと思います。

今回からは、カルダノの公式を導出した際に考えた(実数係数の)3次方程式
$$
x^3-3px-2q=0
$$について、解の表示を与えてゆきたいと思います。カルダノの公式において複素数 \(u^3\) の立方根を求める計算が厄介でしたが、そのデメリットを改善しようとしたときに自ずと三角関数が現れる様子を見ていただければと思います。

では早速、見てゆきましょう。(本記事では、途中計算の方針を示すことで、具体的計算を省略している部分があります。)

 

本記事は【3次方程式の解の公式シリーズ】の第2弾です。

 

カルダノの公式で計算が困難であった点とは

カルダノの公式の復習

3次方程式
$$
x^3-3px-2q=0
$$において \(p\neq0\) であるとすると、その解は
\begin{align*}
x&=u+v,&
\begin{cases}
u^3=q+\sqrt{q^2-p^3}\\
v=\dfrac{p}{u}
\end{cases}
\end{align*}と書けていました。これをカルダノの公式と呼んでいましたね。

デメリットの改善方法

この公式において、\(u\) さえ求まってしまえば、あとはその他の式に代入するだけですね。問題は、その \(u\) を求めることが、右辺 \(q+\sqrt{q^2-p^3}\) が一般には複素数であるため手こずるということです。そこで、それを改善するために極形式を導入しましょう。

つまり、
$$
u=re^{i\theta}
$$とおくのです。(オイラーの公式 \(e^{i\theta}=\cos\theta+i\sin\theta\) をご存知ない方は、こちらの記事「「iのi乗」は実数?虚数?それとも…。証明せよ。 〜指数の拡張〜」をご覧ください。)

 

極形式によるカルダノの公式の書き換え

極形式が有効であるための条件

まず、\(u^3=q+\sqrt{q^2-p^3}\) の右辺が虚数になってくれなければ「わざわざ極形式を導入する旨み」があまりないので
$$
q^2-p^3<0
$$であるとしましょう。そうすれば、
\begin{align}
u^3=q+i\sqrt{p^3-q^2}\tag{1}
\end{align}と書くことができます。この \(u\) に関する3次方程式を具体的に解いてみましょう。(ここで、仮定より \(0\leq q^2<p^3\) であるので、\(p>0\) であることに注意しましょう。)

極形式における \(r,\theta\) と係数 \(p,q\) の関係

式 (1) の両辺の絶対値をとり、整理すると
$$
r=\sqrt{p}
$$となります!

よって、式 (1) に代入することで
\begin{align*}
\cos3\theta+i\sin3\theta=\frac{q}{p\sqrt{p}}+i\frac{\sqrt{p^3-q^2}}{p\sqrt{p}}
\end{align*}を得ます。これより、\(3\theta\) は
\begin{align*}
\cos3\theta&=\frac{q}{p\sqrt{p}},&
\sin3\theta&=\frac{\sqrt{p^3-q^2}}{p\sqrt{p}}
\end{align*}となるものとして、\(0 \leq 3\theta < 2\pi\) の範囲で唯一つとることができます。

ここで、よく見てみると \(\sin3\theta\geq0\) ですから、\(0 \leq 3\theta \leq \pi\) の範囲まで限定することができますね。このことから、上の関係式を満たす \(0 \leq \theta \leq \dfrac{\pi}{3}\) は第一式である「\(\cos3\theta=\dfrac{q}{p\sqrt{p}}\)」のみによって決定されるのです!

つまり、\(0 \leq 3\theta \leq \pi\) は \(\cos\) の逆関数 \(\cos^{-1}\) を用いて
$$
3\theta=\cos^{-1}\frac{q}{p\sqrt{p}}
$$と書くことができるのです!

一般的な \(\theta\) としては、\(k\) を整数として
$$
3\theta=\cos^{-1}\frac{q}{p\sqrt{p}}+2k\pi
$$すなわち
\begin{align}
\theta=\frac{1}{3}\cos^{-1}\frac{q}{p\sqrt{p}}+\frac{2k}{3}\pi\tag{2}
\end{align}と書くことになります。

極形式における \(r,\theta\) と解 \(x\) の関係

今、\(r=\sqrt{p}\) より \(u=\sqrt{p}e^{i\theta}\) と書けているので、\(x=u+\dfrac{p}{u}\) に代入して計算することで
\begin{align}
x=2\sqrt{p}\cos\theta\tag{3}
\end{align}となることがわかります!

 

三角関数を用いた解の表示

以上より、極形式における \(r,\theta\) によって解 \(x\) と係数 \(p,q\) が繋がりました。式 (3) による解 \(x\) の表示に式 (2) を代入することで、\(q^2-p^3<0\) における解の表示


\begin{align}
x=2\sqrt{p}\cos\left(\frac{1}{3}\cos^{-1}\frac{q}{p\sqrt{p}}+\frac{2k}{3}\pi\right)\quad(k=0,1,2)\tag{4}
\end{align}

 

を得ます!

 

この表示を少し眺めると、\(\theta=\dfrac{1}{3}\cos^{-1}\dfrac{q}{p\sqrt{p}}\) という \(0\) から \(\dfrac{\pi}{3}\) の角 \(\theta\)(アニメーションでは青い動径が作る角です)に対して、\(\theta\), \(\theta+\dfrac{2}{3}\pi\), \(\theta+\dfrac{4}{3}\pi\) という円を3等分する角を定め、\(2\sqrt{p}\cos\) によって半径 \(2\sqrt{p}\) の円における \(x\) 座標を抽出(射影)していると見ることができます。

その様子をアニメーションで見てみましょう。

 

より詳しい理論について

今回は説明の簡潔性を求めたため、途中の式変形などの説明を省略しています。本記事のより詳しい説明は以下の動画をご覧ください。

 

最後に

いかがでしたか?

今回はカルダノの公式から三角関数を用いた3次方程式の解の表示を導出しました。実はこの公式、ビエトの解と呼ばれており、三角関数の3倍角の公式を用いた導出が知られています。今回は、それを別の方法で導いたことになりますね。

みなさんは気付きましたか?

「あー、このときは異なる3個の実数解を持つのかー。」

と。

さて、虚数解を持つときはどうしましょうか。つまり、今回扱わなかった \(u^3\) が実数となる \(q^2-p^3\geq0\) の場合を考える必要がありますよね。

安心してください、それが次回、第3弾のテーマですから。



AkiyaMath

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